【序章】ACSUREとは何か?
― 感情と関係性を軸にしたメディアの再定義 ―
現代社会において、私たちは膨大な量の情報の中で暮らしている。検索すれば即座に答えが得られ、SNSにはあらゆる意見や話題が溢れかえる。しかし、本当に求められているものは情報そのものではなく、その背後にある「人との関係性」や「感情」ではないだろうか。
ACSURE(アクシュア)は、この問いを起点にして誕生したメディアである。ACSUREという名称には、「感情(Emotion)」を起点に「関係(Relation)」を編み、静かな社会的インパクト(Impact)を生み出すという、ERIエコノミーの思想が込められている。
ACSUREは、従来の「情報発信型メディア」とは明確に異なる。その目的は「情報を伝えること」ではなく、「感情を起点に関係性を編むこと」にある。この新たなメディア哲学を、ACSUREでは「関係価値編集(Relational Value Editing)」と名付け、世界初の編集手法として体系化した。
関係価値編集とは、PV数やバズといった数値的評価基準を用いず、情報が生み出した感情や関係性を評価の軸とするものである。その具体的な編集プロセスは、「多心的エディット(Multi-Aspect Editing)」および「多声的エディット(Polyphonic Editing)」として定義されている。多心的エディットは編集者自身が複数の視点を持ち、多声的エディットは編集内に多様な視点や語り口を取り入れる手法である。
また、ACSUREは独自のコンテンツ設計として「三層構造メディア(Three-Layer Media Design)」を採用している。この構造は、「共感レイヤー(感情への働きかけ)」「構造理解レイヤー(社会課題の解説)」「行動レイヤー(具体的なマッチングと行動)」の3層から構成され、読者が自然に感情から行動に至るような編集を行っている。特に行動レイヤーにおいては、「感情ベースのマッチング設計」を導入し、「アクシュする(Akushu)」という独自概念で読者と対象者の関係性を実際に結んでいる。
ACSUREは情報の伝達を目的とせず、あくまで感情や関係性を軸にしているため、一般的な数値的成果とは異なる「静かなニーズ(Quiet Needs)」に焦点を当てる。これは、従来のメディアが見落としてきた小さな共感や信頼、微かな気づきであり、社会的な関係性を深める潜在的な要素である。
本論文シリーズでは、ACSUREのこれらの概念や手法を理論的に整理し、専門家・研究者・政策担当者・広報実務者が社会実装や実践に応用できるように体系化している。編集という行為が単なる情報整理ではなく、人間社会における「関係を編む」行為として再定義されることで、現代社会の課題解決にも資することを目的としている。
次章以降では、具体的な理論的背景、編集手法、社会実装の事例を紹介しながら、ACSUREが提示する「新しい編集の形」を詳述していく。
2025年4月21日 田中恵理
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【序章】ACSUREとは何か?
- 社会的背景と問いの出発点
- 情報過多社会と孤立感の同時進行
- 「つながり」や「関係性」を生み出すメディアの必要性 - メディアの役割転換:「情報」から「関係」へ
- 従来の情報発信型メディアとの比較
- 「伝える」ではなく「つながる」ことへの再定義
- “関係メディア”という概念の導入 - ACSUREの構造と思想的背景
- ERIエコノミー、関係価値編集の概略
- 多心的エディット・多声的エディットの定義と位置づけ
- 「静かなニーズ」と非バズ型メディアの思想的意義 - 本論文シリーズの目的と対象者
- なぜ理論化・体系化が必要か
- 誰に読んでほしいのか(研究者・実務家・行政)
- 今後の章で扱う構造と展望