【1. 社会的背景と問いの出発点】

情報過多社会と孤立感の同時進行

現代社会は、かつてないほどの情報環境に包まれている。インターネット、SNS、検索エンジン、各種メディアによって、私たちは毎秒のように新たな情報にさらされている。スマートフォンの通知ひとつで、遠く離れた出来事に即座にアクセスでき、最新のトレンドや議論がタイムラインに並ぶ。まさに「知る」ことのハードルは、劇的に下がったと言える。

しかし、情報へのアクセスがこれほど容易になった一方で、人々の孤立感や不安感はむしろ高まっているという指摘がある。事実、OECD諸国を中心に、若者や高齢者を問わず「誰とも深く話せない」「信頼できる人がいない」という声が増えている。特に日本では、社会的孤立や無縁化の問題が深刻化しており、「情報化社会」であるにもかかわらず、「つながりの空白」が広がっている。

この現象は、単なる個人の心理的問題ではなく、メディアのあり方そのものが変容を迫られていることの表れでもある。情報をどれだけ多く発信し、拡散し、届けたとしても、「誰とどのようにつながるか」が考慮されていなければ、それは“届いていない”に等しい。

このような背景のもと、ACSUREは、「情報を届ける」ことではなく、「感情と関係性を編む」ことを編集の主軸に据えたメディアとして構想された。単なる情報流通ではなく、読者の内面に“問い”を生み、行動のきっかけとなるような「関係メディア」の再設計である。

つまり、現代のメディアに問われているのは、「正確かどうか」「速いかどうか」ではなく、「感情に触れたか」「信頼と共鳴を生んだか」という視点である。そしてその視点こそが、これからの社会において必要とされる「編集の哲学」であり、ACSUREの出発点である。