概要定義
リレーションズ・ジャーナリズム(Relations-Based Journalism)とは、出来事や社会問題を「関係性」の視点から切り取るジャーナリズム。単に“何が起きたか”を伝えるのではなく、“誰と誰が、どうつながったか”“関係がどう動いたか”にフォーカスを当てる報道スタイルです。
被取材者の“声”だけを拾うのではなく、そこに生まれた関係の構造や、問いの発芽まで丁寧に描く。リレーションデザイン型ジャーナリズムの発展系であり、記録だけでなく“つながりの再設計”を担う思想的編集のかたちでもあります。
提唱者・初出
提唱者:田中恵理(たなかえり)
初出:感情経済構造論(2025)
分類:🟠 世界初
なぜリレーションズ・ジャーナリズムが必要なのか?
従来のジャーナリズムは、「誰が、いつ、どこで、何を」というファクトの羅列や、事件性・話題性に頼った“断絶された情報の切り売り”に寄りがちでした。
しかし、私たちが本当に知りたいのは、「この出来事の背景に、どんな関係性があったのか」「この人と人は、どんな“気持ち”でつながっていたのか」という、物語の“奥”にある構造です。
リレーションズ・ジャーナリズムは、関係を主語に据えることで、報道が“感情と信頼の媒介”になりうるという新しい可能性を拓きます。
リレーションズ・ジャーナリズムの視点と技法
視点・要素 | 内容 | 実践例・形式 |
---|---|---|
関係性の焦点化 | 出来事ではなく「つながりの変化」を捉える | 地域の連携、対話プロセスの取材記事 |
共感と参与 | 当事者の視点を丁寧に受け止め、共に編集する | モニター記事、対話型インタビュー |
再訪設計 | 一度書いて終わりではなく、関係が続いていく | 続報形式、アクシュ導線の挿入 |
関連する概念とのつながり
概念名 | 関係性の解説 | 分類 |
---|---|---|
🟠 関係価値編集 | 関係そのものを成果とみなす編集思想。リレーションズ・ジャーナリズムはその報道応用型。 | 世界初 |
🟠 多声的エディット | 一人の語りではなく複数の“声”を響かせる編集技法。関係の多層性を伝える上で不可欠。 | 世界初 |
🟢 リレーションデザイン型報道 | 再定義された報道スタイル。つながりを前提に構成するアプローチ。 | 再定義・実践 |
学問的背景と理論支柱
学問領域 | 内容 |
---|---|
主領域:報道哲学 | 報道とは何か?何を伝えるべきか?を構造的に問い直す理論領域 |
主領域:構成主義メディア論 | 情報の意味は“受け手との関係”によって成立するという社会構成主義的視点 |
補助領域:参与観察 | 取材対象との共在を通じて深く理解する、エスノグラフィ的手法 |
補助領域:協働編集論 | 取材者と編集者が「共に創る」メディア制作への転換視点 |
英語表記・略称
英語表記:Relations-Based Journalism
略称:RBJ(必要に応じて使用)
関連概念:Constructive Journalism/Slow Journalism/Engaged Reporting
つながりを取材する、という視点
リレーションズ・ジャーナリズムが見つめているのは、事件の外側ではなく、その“間(あいだ)”です。
情報のために人を使うのではなく、人との関係のなかにこそ“報道の本質”を見出そうとする編集姿勢。
「この人が何を語ったか」だけでなく、「その語りの背景に、誰との関係があったのか」を知ることは、わたしたちの“知るという行為”をやさしく変えていきます。
物語を起点に、関係を伝える。
それが、リレーションズ・ジャーナリズムの真骨頂です。