出会いは、編集ではじまり、編集ではじまらなかった
「編集者っていうと、取材して、整えて、出すっていうイメージがあるかもしれません。でも、私の場合は全然ちがっていて。“関係を編む人”なんです」
そう語るのは、ACSURE(アクシュア)編集長・たなかえり。
福祉、教育支援の現場、WEBマーケティング事業を経て、現在は社会解決型マッチングメディア「ACSURE(アクシュア)」の編集長として、多層的なメディアづくりに取り組んでいる。
その根っこには、「情報を伝える」よりも、「関係をつくる」ことへの執着があった。編集という言葉では表しきれない、でも誰かと誰かの“間”に立つこと。それこそが、たなかの人生そのものだった。
福祉の現場で見た、「声にならない想い」
大学卒業後、最初に選んだのは、福祉の現場だった。
「生活困窮世帯や虐待を受けた子どもたちと関わる中で、“声にできない”という状況を何度も目の当たりにしました。言葉が出ないって、すごく苦しいんですよ。相手に伝えたいことがあっても、うまく言葉にならない。だけど、その“言葉にならない思い”って、確かに存在している。むしろ、そこにしか本当は真実がない気さえして。」
彼女はこれまで、講演や登壇を通じてのべ1000人以上に、現場で感じた声なき声を伝えてきた。
「制度の隙間にこぼれてしまう子どもや家庭が、本当に多いんです。支援が必要なのに届きにくい人たち。そういう存在に、私はずっと心を向けてきました。私にとっての支援とは、“制度”ではなく、“あの子が何を感じているか”に目を向けることでした」
その言葉に揺るがない軸が見える。
「いい話」で終わらせないために、書く
そんな彼女が立ち上げたACSURE(アクシュア)は、ただのローカル取材メディアではない。エッセイのような、社会解説のような、でも“会いたい人ができる”不思議な記事群。
「いい話だったね、で終わってほしくないんです。 “え、それ知らなかった!” “もっと早く知りたかった!”って、読んだ人が自然に誰かに話したくなったり、会いに行きたくなったりする。 その“やさしい衝動”をちゃんと受けとめられるように、導線を設計しています」
その想いから、「読んだあとに寄付できる」「相談できる」「誰かを紹介できる」など、行動を設計したメディア構造をつくった。
さらに、人と人の紹介は、「アクシュする」と名づけた。 マッチングとは、商品や地域の紹介ではなく、人と人を信頼でつなぐ行為。 体験レビュー記事も、「心が動いたから紹介したい」と思えるものだけを扱う。 「“応援”が自然に起こる記事を目指しています」
三層構造で伝える、ACSUREというメディア
ACSUREには、ユニークな三層構造がある。
- エッセイ: 編集長自身の違和感や体験から始まる、共感の入口
- 社会解説: 背景にある制度・地域・時代性を丁寧にひもとく文脈
- マッチング: 具体的に“つながる導線”を用意した出口設計
「“いい人を紹介して終わり”じゃなくて、その後のやり取り、フォロー、時には断ることも含めて、“編集部が関わり続けるメディア”でありたいんです。そして、私は、誰かの代弁じゃなくて、自分が感じたことを書くようにしています。 だからこそ、“それ、私も思ってた”って共鳴が生まれるのかもしれません」
情報だけでなく、感情にも責任を持ちたい。それが、たなかえりという編集長の信念だ。
編集者は、「伝える人」ではなく、「受けとる人」
「編集って、“伝える”ことだと思われがちなんですけど、私は“受けとること”だと思ってます。
相手が言葉にできなかったことを、こちらが代わりに受けとって、言葉にして、返す。その繰り返しなんです。」
伝えることは、自分を出すことじゃない。相手の内側にあったものを、“ようやく言えた”と感じてもらえる形にすること。だから、彼女の原稿は、誰が書いたかわからないほど“自然体”だ。一読して、書き手の存在が消えていく。その余白が、読み手の感情を受けとめる。
静かに、やさしく、社会を動かすメディア
これからのACSUREのビジョンを尋ねると、少し考えてからこう答えてくれた。
「“静かで、ちゃんと届くもの”をつくっていきたいです。 大きな声じゃないけど、ちゃんと届く。“わかる”じゃなくて、“感じる”。 そんな関係を編み続けられるメディアでありたいです」
情報ではなく、関係のタネをまくメディアとして。 ACSUREは、日々ことばとともに、あたたかく、ひとつずつ縁を編んでいる。
たなかえりとアクシュしたい方へ
ACSUREでは、取材・掲載のご相談を受けつけています。「この人を紹介したい」「地域の取り組みを届けたい」など、どんな些細なご縁でもご相談ください。
編集長・たなかえりが、じっくりとお話を聞かせていただきます。