彼女の存在に、私は救われた。
はじめて医学博士「ドクターりん」さんと出会ったのは、少し気持ちが沈んでいたときだった。
鬱から社会復帰するために、どうやって自分を立て直していけばいいのかもわからなくて。
でも、りんさんはこう言ってくれた。
「まだ回復には早いから自分をまだ休ませてあげないと」
そのひとことに、張り詰めていた何かが、ふっとほどけた。
涙が出そうになった。私のことを何も知らないはずなのに、なぜか、わかってくれているような気がした。
優しいのに、どこか見透かされているような言葉。
リフレクションとリフレーミングの会に参加したのも、最初は軽い気持ちだった。
「おもしろそう」「何か学べそう」「誰かと出会えそう」──
そんな、知的好奇心と少しの人恋しさ。でもそこにあったのは、知識だけではなかった。
優しいのに、どこか見透かされているような言葉。
「無理しなくていいですよ」なんて、言葉にするのは簡単だけれど、りんさんの声には、その裏に“本気でそう思ってくれている”温度があった。
ノートに綴った、「ドクターりん」の言葉
会のあと、私はノートを開いた。
そこに綴ったのは、「ドクターりん」さんの言葉。
「あなたは特別な人ですよ」
「たくさん種を蒔いているのだから、花が咲くのは当然」

私はこれまで、過去を振り返らずに生きてきた人間だった。
ただ頑張って、走って、結果を出すことだけを大事にしていた。
でもこの1ヶ月で、少しずつ自分を振り返るようになった。
今日は調子が良かった。
昨日は頑張りすぎたかもしれない。
来週は、もう少しゆっくりしよう。
そんなふうに、自分の波を感じ取れるようになってきた。
波にあわせるように自分を労わる。
それが、私にとっての「背中を押された」ということだったのだと思う。
後編では、そんな「ドクターりん」さんがどんな人生を歩み、
なぜ「声」と「論文」を通して人とつながろうとしているのか。
研究とやさしさのあいだで生きる、その哲学に迫っていきます。
(後編につづく)
