「鹿角には何もない」は本当か、確かめる旅へ。
2024年初夏、心身ともに疲れ切っていた私は、「どこか行ったことのない街に旅に出たい」と思い、かづコトアカデミーに応募した。「かづコトアカデミー」は、鹿角市に興味関心のある首都圏在住の若者や鹿角市在住の若者を対象に、地域の盛り上げをする関係人口の人材育成講座のことだ。
正直、秋田は行ったことがないし、よく分からない。とりあえず、日本列島ダーツの旅的に、ダーツが刺さったところ=応募して参加が決まったところに行ってみよう。
そんな投げやり感満載のまま「かづコトアカデミー」への参加が決まった。貧乏旅が趣味の友人に話を聞いてみる。

鹿角ってどんなところ?っていうか、なんて読むの



え、”かづの”でしょ?ぶっちゃけ何もないよ



げっ…応募しちゃったよ
大宮から鹿角花輪へ。高速夜行バスで7時間の旅に出る
そんな不安だらけのところからスタートした、「かづコトアカデミー」。フィールドワークは2泊3日。
集合場所の最寄り駅は、鹿角花輪駅。どうやって行くか悩んでいたところ、大宮駅から鹿角花輪駅までの直通・高速夜行バス「ジュピター号(秋北バス)」が走っていることが判明。



ご飯にお金をかけたいから、交通費は抑えたい派。
車内の雰囲気はこんな感じ。


USB充電ができるのだけど、TYPE-Bしか差し込めず(2024年10月現在)。iPhone(TYPE-C)の充電を諦め、7時間の睡眠の旅に出るのでした。正直、鹿角に到着するまではまったく期待していなかった。 どんな暇つぶしをしようかと考えていたくらいだ。



まあ、コンビニかカフェがあればいっか。




日の出前、花輪鹿角駅に到着する。久々の7時間の長旅で正直くたくた。花輪市場駅の休憩所で仮眠をとった。
うとうとしていると、鳥のさえずりに混じって、妙に元気なお母さんたちの声が聞こえてきた。



私ね、今から病院行くのよ!
「あはははーー!」と、なんだか嬉しそうなトーン。



…いや、元気すぎるでしょ、病院いらなくない?(ねむねむ)
寝ぼけ眼のままぼんやりと考えた。朝っぱらから、なんてパワフルなんだろう。
花輪市場で鹿角マダムと出会う
その日はちょうど、毎月3と8の付く日に開催される花輪市場の朝市だった。江戸時代の頃から行われていたようで、風情ある街並みに、魚介、和菓子、新鮮な野菜がずらりと並ぶ。どこか懐かしい空気に包まれながら、私は思わず自撮り棒を取り出し、ライブ配信を始めた。


すると、一人のマダムが声をかけてきた。



かわい子が来たね!学生さん?



…私、38歳、独身。
一瞬、時が止まった。いや、これは? 嬉しい? 照れくさい? でも、やっぱり嬉しい!! 褒められるって、何歳になっても気分がいいものだ。そんな私の心情をよそに、鹿角マダムが突然言った。



ちょっと!あんた、宣伝してくれる人?うちに上がっていきなさいよ



えっ、出会って5分ですよね?
「元気なお母さんに捕まったなww」と草が生えたコメントが殺到。お母さんの勢いに押されて、いざご自宅へ。
そこには昔ながらの懐かしい空間があった。なんて素敵なお家なんだろう。こういう家に生まれたかった。話によれば、旦那さんが有名な音楽家だったそう。研究されていたようで、新聞記事やら書籍やら、次から次へと出てくる。




こんなふうに、初対面のよそ者をあっさり家に上げてくれるなんて。 都会では考えられないけれど、ここではきっと、当たり前の光景なのだろう。
鹿角のお母さんたちは、夜のスナックでもノリノリで踊る!
夜は「かづことアカデミー」の仲間たちとスナックへ行った。 カウンターに座っていた70代のお母さんたちに思い切って声をかけた。



今日、埼玉から初めて来たんですよ。素敵な街ですね。



あらぁ!わざわざ?鹿角は若い子が減っていて困ってるのよ。
話しているうちにカラオケが入り、「一緒に歌いましょ!」とマイクを渡すと、お母さんたちは大盛り上がり。歌い、踊り、手拍子を打ち、楽しそうに笑う。…もう夜中なんですけど、お母さんたち、元気すぎません?



ねえ、まだ独身なら、うちの息子どう?
……って、まだ出会って30分ですけど!こんなに陽気でおおらかで、フランクな人たちがいるなんて。 この街で暮らしていたら、きっと毎日が楽しいに違いない。鹿角のお母さんたちは、昼も夜も、あたたかく、そして全力で人生を楽しんでいた。



いつも元気なポンちゃんが圧倒されるなんて…鹿角のお母さんパワーすごい
こうして、「本当に鹿角には何もないのか?」を探る旅が始まったのでした。(つづく)