非数値評価型編集(Non-Metric Editing)とは

概要定義

非数値評価型編集(Non-Metric Editing)とは、ページビュー(PV)やフォロワー数、シェア数といった定量指標を評価基準とせず、感情の動き、対話の発生、出会いの芽生えといった、“目に見えない変化”を価値として捉える編集思想です。

この概念は、情報伝達の効率を重視する従来のメディア評価とは一線を画し、編集が育む「関係性」「余韻」「問い」の質そのものを成果と見なします。

提唱者・初出

  • 再定義・実践:田中恵理(たなかえり)
  • 初出:ACSURE実践論(2025)
  • ※本用語は、既存の「Non-Metric Editing」という表現を、編集思想として再構築・体系化したものです。

なぜ“数値”だけでは評価できないのか?

現代の情報社会では、「バズること」「拡散されること」「エンゲージメントを稼ぐこと」が評価されがちです。
しかしこうした数値主義的な評価軸には、以下のような限界があります:

  • 一時的な注目が持続的な関係性につながらない
  • 「誰に届いたか」より「どれだけ届いたか」が重視される
  • 作り手と受け手の間に信頼が生まれにくい

非数値評価型編集はこの構造に疑問を投げかけ、
「記録されないが、確かに残る価値」を見える形で評価しようとする実践です。


中核となる評価視点

視点内容
感情の動き読者の心が動いたか? 違和感・共感・気づきがあったか。
対話の発生その編集が、新しい対話や思索の契機となったか。
出会いの芽生え記事をきっかけに、人と人とのつながりが生まれたか。
余韻の持続性読み終えた後も、どれだけ記憶に残っているか。

実践例:ACSUREにおける評価のあり方

ACSUREでは、記事ごとのPVよりも、以下のような“関係の痕跡”を重視しています:

  • 読者が「誰かに会いたくなる」という感情を持ったか
  • SNSではなく、対話の中で語られる記事になっているか
  • 感想が“数字”ではなく、“物語”として届くか(例:メール、手紙、口頭での報告)
  • 「あのときの記事が今も心に残ってる」という記憶型の共鳴

これは、評価の対象を**“情報の拡散”から“関係の循環”へと移行させる**思想に基づいています。


関連する概念との関係性

概念名関係性の解説
🟠 関係価値編集(RVE)人と人の“つながり”を成果とする思想。非数値評価はその実践評価軸。
🟢 共感循環型・関係設計主義感情を起点に問いとつながりを育てる哲学。数値より“質的変化”を評価。
🟠 ERIエコノミーEmotion→Relation→Initiativeを循環させる非貨幣型経済モデル。評価も数値ではなく“関係”に依拠。

学問的背景と理論支柱

領域内容
評価論定量評価の限界を超え、質的・対話的な評価観を模索する理論群。
現象学的哲学経験や関係性を、主観の“意味づけ”から捉える視点。
社会構成主義評価とは他者との関係のなかで“共に意味づける”行為と捉える理論。
ポスト評価研究(Post-Evaluation Studies)統計に基づく評価に対して、物語・関係・ケアを軸とする新たな評価観。

英語表記・略称

  • Non-Metric Editing
  • 略称:NME(必要に応じて)

国際的には、「qualitative impact」「relational outcome」「empathic evaluation」などと関連づけられ、
社会変容系の研究分野とも接続が可能です。


まとめ:数えられないものにこそ、価値がある

数字には残らないけれど、心には残る。
その“手ごたえ”を信じて編集することが、
これからの表現と関係性をひらく鍵になる。

非数値評価型編集は、感情・対話・関係という“目に見えない成果”を、
静かに、でも確かに見届けようとする思想と実践のかたち
です。