感情・関係・問いで社会を再構築する、新しい思想の言葉たち
本ページは、田中恵理(たなかえり)によって提唱された、感情経済構造論(Emotional Economy Structure Theory )の中核概念を体系的に整理した、構造理論型の用語辞典である。
この辞典は、感情・関係・問いといった非数値的価値を起点に、社会構造・行動設計・経済循環を再構築しようとする理論的枠組みに基づき、各概念の定義・分類・初出・位置づけを明示することを目的とする。
用語の分類について
本辞典に収録された用語は、以下の3つの観点から分類されている。
- 🟠 世界初(Original Concept)
完全に新規の構造・概念として、ACSUREおよび感情経済構造論において初めて提唱されたもの。 - 🟢 再定義・実践(Redefined & Applied)
既存の用語を、独自の構造設計・社会実装視点から再編集・再定義したもの。
理論的には既出であるが、概念の応用および拡張において新たな枠組みを与えている。 - 🔵 解釈含む(Interpretive Extension)
既存の学術用語に対し、感情・問い・共感といった視点を加え、
ACSURE特有の関係構造的解釈を付与しているもの。
本辞典の意義と活用
本辞典は、単なる語彙集ではなく、感情を起点に社会を構造化する思想群のアーキテクチャを提示するものである。
- 理論研究(経済学・社会哲学・メディア論)の基礎資料として
- 実践者・設計者・教育関係者が再現・応用可能な構造設計モデルとして
- 感情と社会設計を横断する学際的研究の足場として
本用語辞典は、感情を“設計可能な構造”と捉えるための共通言語の場である。
編集思想・社会哲学
🟠 共感循環型・関係設計主義/Empathic Relation Designism
「感情の共感」から始まり、「問い」が生まれ、「つながり」が編まれ、「関係として循環していく」プロセスを価値とする思想。従来の発信主義・効率主義とは異なり、関係を設計すること自体が社会実装であるという立場をとる。
- 編集が設計になり、社会と接続する道筋をつくる
- 感情→構造→行動(CET)を軸にした思想体系
- 「届ける」ではなく「育てる」ことを重視
主な学問領域:社会哲学、メディア論
補助領域:感情研究、ケア倫理学、行動科学
▶ 詳しく見る
🟠 納得主義/Conviction-Driven Practice/Convictionism
効率や締め切りよりも、「納得できたかどうか」を編集や制作、行動の基準とする思想。
これは単なる“こだわり”ではなく、信頼を前提とする丁寧なアウトプットを重視する社会姿勢。
- 誰かの「いいね」より、自分の納得を基準にする
- 誰にでもわかる言葉より、“信頼できる手渡し”を選ぶ
- 急がない。整えて、響かせる
主な学問領域:教育哲学、意思決定論
補助領域:感情経済学、編集倫理
▶︎ 詳しく見る
🟠 関係価値編集/Relational Value Editing
「関係性そのもの」を価値と見なす、新しい編集の哲学。
読者との信頼関係、感情の余韻、対話の始まりなど、数値化されない“つながり”を成果として扱う。
情報を届けることを目的とせず、「関係をつくるための起点」として編集を位置づける。
ACSUREが実践する全ての編集思想の土台であり、
非数値評価型編集・ERIエコノミー・感情マッチング設計などすべての基盤にある概念。
主な学問領域:メディア論、社会哲学
補助領域:感情研究、評価学、ケア倫理学
▶ 詳しく見る
🟠 感情構造デザイン/Emotional Structure Design
情報や構造ではなく「感情の流れ」そのものを設計対象とする実践哲学。読者が“どう感じて、どう動くか”を前提に、エッセイ・解説・出会い導線などを設計。編集における感情の“手触り”や“余韻”を価値とする。編集構造デザイナーの基盤技術。
主な学問領域:感情工学、ナラティブ構造論
補助領域:編集工学、身体知論
▶︎詳しく見る
🟢 非数値評価型編集/Non-Metric Editing
PVやフォロワー数ではなく、感情や対話、出会いといった目に見えない変化を評価の軸とする。
主な学問領域:評価論、哲学(現象学)
補助領域:社会構成主義、ポスト評価研究
▶ 詳しく見る
🟢 非バズ型メディア/Non-Buzz Media
一過性の拡散や話題性を追わず、“じわじわと深く届く”静かな共鳴を大切にする姿勢。
主な学問領域:メディア文化研究
補助領域:批評理論、オルタナティブ・ジャーナリズム
▶ 詳しく見る
編集手法・構造
🟠 CETメディア(感情起点型メディア)/CET-Based Media
「感情」「問い」「想い」を起点に構成された、新しいメディア設計思想。CTA(Call to Action)ではなく、CET(Call to Emotion & Thought)を起点に、読後に“心が動く”導線を重視する。読者が自分の感情と対話する“余白”を編集で設計する。
主な学問領域:メディア論・感情心理学
補助的な学問領域:ナラティブ理論・行動科学・認知科学・編集工学
▶ 詳しく見る
🟠 多心的エディット/Multi-Aspect Editing
編集者の中にある複数の“人格”や“感情の声”を意図的に使い分ける実践的編集手法。
主な学問領域:編集論、認知心理学
補助領域:内的対話論(Voice Dialogue)
▶ 詳しく見る
🟠 多声的エディット/Polyphonic Editing
複数の声を“対等に響かせる”構造。読者自身がそのとき必要な声を選ぶことができる音楽的編集哲学。
主な学問領域:文学理論(バフチン)、メディア哲学
補助領域:対話論、音楽構造論
▶ 詳しく見る
🟠 三層構造メディア/Three-Layer Media Design
共感(エッセイ)→構造理解(社会解説)→行動(マッチング)という三段階構造で読者体験をデザインする編集手法。
主な学問領域:情報設計論、メディア構造論
補助領域:ナラティブ理論、感情工学
▶ 詳しく見る
🟢 世界観デザイン/Worldview Design
情報提供ではなく「感情や問いのための居場所」として、感覚的に居心地のよい空間や余白を設計するACSUREの手法。
主な学問領域:文化人類学、意味論
補助領域:デザイン思考、構造構築論
行動設計・マッチング
🟠 CET設計/Call to Emotion & Thought
読後に行動(CTA)を促すのではなく、感情や思考に火を灯すための静かな編集導線の設計手法。
主な学問領域:行動科学、感情設計論
補助領域:行動経済学、感情心理学
▶︎ 詳しく見る
🟠 REX(Relational Experience)|関係体験設計
感情や信頼、気づきを通じて「関係性そのもの」を体験として編集・デザインする手法。情報や物語の一方通行ではなく、「体験を通じて、関係が育つ」構造を設計する思想。ACSUREでは、CETやアクシュ導線、モニター記事などに体現されている。
UXやCXのようなユーザー中心設計とは異なり、関係の双方向性・感情の循環性を重視。相手を“対象”とするのではなく、共に“つくる関係”として位置づけている。
主な学問領域:感情社会学・実践デザイン論
補助領域:編集工学
▶︎ 詳しく見る
🟠 感情ベースのマッチング設計
「この人に会いたい」という読後の感情から、実際の出会いや支援につながる導線を構築する手法。
主な学問領域:マッチング理論(行動設計)
補助領域:感情AI、UX設計
▶ 詳しく見る
🟢 アクシュする
読者が記事を読んで心を動かされたとき、「誰かと会いたい」と思ってつながりの第一歩”を踏み出す行為。
主な学問領域:コミュニケーション論、マッチング理論
補助領域:行動経済学、関係構築論
▶ 詳しく見る
🟢 感情起点編集/Emotion-driven Editing
情報ではなく編集者の感情や読者の共感を起点にした編集スタイル。感情をベースに関係と行動を生むACSURE独自の編集手法。
主な学問領域:編集工学、感情心理学
補助領域:メディア倫理、ナラティブ理論
経済思想・評価モデル
🟠 ERIエコノミー/Emotion × Relation × Impact
感情が関係を生み、その先に行動が芽生えるという非金銭型の循環型経済モデル。ACSUREから世界で初めて提唱。
主な学問領域:新経済思想、倫理経済学
補助領域:関係経済、ケア経済、共感経済
▶ 詳しく見る
🟠 静かなニーズ/Quiet Needs
バズや数字に表れないが確実に存在する小さな共感や感情のこと。ACSUREはこの静かなニーズに応えることで社会的関係をつくる。
主な学問領域:社会心理学、福祉社会学
補助領域:ライフストーリー研究、構造的孤立研究
🟠 GDPに代わる「関係値」モデル/Relational Value as Social Wealth
金銭的な生産や消費(GDP)ではなく、「信頼」や「共感」「関係の深さ」を社会的価値とする測定モデル。ERIエコノミーと連動し、「つながりの密度」が未来の豊かさを定義するという発想。
主な学問領域:経済哲学・社会評価論
補助的な学問領域:社会学(特に信頼論・関係資本論)・幸福学・政治経済学・SDGs/ESG評価理論
🟠 発酵型評価モデル/Fermentative Value Model
今すぐ数値には現れなくても、“後からじわじわ効いてくる”信頼や問いを評価対象とする考え方。発酵食品のように、熟成のプロセスを前提とする評価設計。
※これは既に「発酵型経済」の補助概念として掲載されていますが、評価モデルとして再整理も可。
主な学問領域:評価学、時間論
補助領域:組織開発論、熟成プロセス理論
教育・表現・実装
🟠 リレーションズ・ジャーナリズム/Relations-Based Journalism
出来事や社会問題を「関係性」の視点から切り取るジャーナリズム。被取材者の“声”だけでなく、“誰と誰がどうつながるか”を伝えることに主眼を置く。リレーションデザイン型ジャーナリズムの発展系。
主な学問領域:報道哲学、構成主義メディア論
補助領域:参与観察、協働編集論
🟢 実践論文型メディア
エッセイ・紹介・体験・問いが論文的構造で交差するメディア形式。感情を入口に普遍性に接続する。
主な学問領域:教育哲学、アクションリサーチ
補助領域:参与観察法、実践知研究
▶ 詳しく見る
🔵 ソーシャルエディット
社会課題・感情・行動を横断的に“編集”することで、人が動く社会構造をつくる試み。ACSUREでは独自解釈で応用中。
主な学問領域:ソーシャルデザイン、編集工学
補助領域:協働設計論、参加型手法
▶ 詳しく見る
🔵 編集工学/Editorial Engineering
情報ではなく関係や構造を編集する学問領域。ACSUREの構造設計の基礎にある思想。松岡正剛が提唱した概念をベースに、ACSURE独自の応用を展開。
主な学問領域:編集理論(松岡正剛)
補助領域:知の編集、構造編集思想
🔵 ナラティブデザイン/Narrative Design
語り方そのものを設計し、読者や社会の認識や感情をデザインする方法論。ACSUREでは多声的エディットなどに実装。
主な学問領域:ナラティブ理論
補助領域:医療人類学、心理社会的支援
ご利用について
本用語集は、感情経済構造論の思想的枠組みを支える概念群を整理・公開したものです。
ACSUREの記事やプロジェクトをより深く読み解くための思想ガイドラインとして、また、教育・研究・社会実装の現場における参考資料として、非営利目的での利用は自由です。
利用にあたってのガイドライン
- 引用・転載・学術目的でのご利用は、出典明記のうえご自由にお使いください。
(田中恵理『感情経済構造論 用語辞典』ACSURE, 2025) - 授業・講演・ワークショップ・教材などでのご活用も歓迎いたします。
- 詳しい用語の背景・応用・事例利用のご相談は、お問い合わせフォームよりご連絡ください。